今年の秋は、コロナが落ち着いた関係で、毎日の施術の合間に、私自身の趣味
も含めて県外に出かけることが多く、気がつけばあっという間に12月を迎えてし
まったかんじです。そんな中、先日やく2年振りに来院されたのは、60代のMさんです。
「今年の7月頃から急に歩く度に左の股関節がぱきぱき音をたてるようになっ
たんです。そのうち、股関節に痛みも出てきたので整形外科を受診し詳しい画像
検査も受けたのですが、自分が納得できるような診断はしてもらえませんでした。
処方された痛み止めの薬を飲んでも良くならないので次に接骨院に行くと仙腸関
節炎だと言われ、それに対応した治療も受けたのですが、やはりしっくりこない
日々を過ごしていました。
ところが最近になり、股関節だけでなく、このままでは歩けなくなるのではない
かと思うくらいに太股の表側までびりびりと辛い痛みが起こったり、左足を外側
に開くのも難しくなってしまっている中、ふと、もしかしたらその周囲の筋肉が
固まってしまっているせいかもしれないと思い受診しました」。
そうおっしゃったMさんの訴えがあった箇所を診察すると、ぱきぱきと音がする
のはいわゆる鼠径部の奥であること、そしてMさんがおっしゃったように、
その鼠径部から太股の表側/外側を中心に広範囲が1枚の板のようにばちんと凝り
固まっているのが触って分かりました。
広範囲の筋肉に緊張や痛みが生じている時は、とにかくそれらの部に対しじっく
りとマッサージを行うのが一番です。
Mさんにもその事をお伝えし、早速仰向けになっていただき、左足の付け根部分
から強さをお聞きしながらマッサージを始めました。
マッサージ治療ではまず、体表近くに存在している筋肉の固さをやや弱揉みで取
り除きます。
そして表面の緊張が取れてくると、自然とその奥にある凝りの大本だと思われる
部分に指先が当たるようになるので、そこからは硬くなっている筋肉の壁をこじ
開けるような気持ちで、硬い箇所に拘り根気よくこつこつと筋肉の柔軟性が戻っ
てくるまでマッサージを続けるというのが私の治療のもっとうです。
どの筋肉も骨にくっついていますが、実はその骨と筋肉との連結部分をしっかり
揉むことにより、筋肉の緊張は取れやすくなります。
「それ、とても気持ち良いですね」、「なんだか痒い所に手が届いているよう
ですごく効いている気がします」、「そんな所も凝っているなんて自分では気づ
きませんでした」。
そんな感想を述べながら気持ちよさそうにリラックスした様子で治療を受けられ
ているMさんを見て、本当に来院していただいてよかったと思いました。
足の表側の治療の後はうつ伏せになっていただき、同じく左のお尻から太股の
裏側を通り、膝の周囲/そして最終的には脹ら脛部から足首にいたるまで、しっ
かりとマッサージを行いました。
「来た時より左足が軽くなりました。ただ、左足を斜め前に出してから戻す時
に股関節の奥でボキッと音がする症状は直らないのでしょうか?」
治療を終えたMさんがそうおっしゃったのでその部を改めて確認したうえで、こ
うお伝えしました。
「今日の治療で左足の状態はある程度改善されると思いますが、ぱきぱき症状
を取りたかったら、鍼治療をお勧めします。指では解しきれない奥深い所の固さ
を鍼により取り除くことは、ある意味マッサージだけの治療よりも短時間で症状
が改善される可能性がありますよ」
「私はまだ鍼治療の経験がないのですが、最近趣味で填まっている茶道のお手
前で、道具を持ったままでもしっかり、自分の体重を支えながら立ち上がれるよ
うに足の状態を直したいので、次回試してみようかな」
そう言いながらMさんはお帰りになりました。