肩関節の動かしにくさと痛みに対する治療法

2023年07月26日
「右肩がかなり上がるようになったんです。最近は、車に乗っている時に右手を伸ばして駐車券を取れるようになったし、右肩の体操も少しずつできるようになってきました。本当に先生のおかげです。」
先日、そう言いながら診察室に入ってきた50代のEさんは、とてもうれしそうでした。

そんなEさんも、今年の4月に初めて来院されたときは、それはそれは辛そうな様子で、「それまではずっと体調がよかったのに、なぜか昨年の秋頃から急に右肩が痛くなり始めて、そのうち右腕も挙げられなくなってしまったんです。友人にここを紹介されるまでもいろいろな治療を試したのですが、正直いって良くはなりませんでした。」とお話ししてくださいました。話を伺いながら、Eさんに右腕を前側と横側にゆっくり挙げていただくと、その時は痛みによりどちらの方向も肩の高さまで挙げることができませんでした。右肩周囲を診察している私に対してマッサージの経験もある事を教えてくれたEさんが、「受けた時は良いけどその後すぐに症状が戻ってしまうので、やはり根本から治療しなければだめだという気がしました」とおっしゃったので、その「根本治療」に最適な鍼治療を早速始めさせていただきました。

実はEさんは、学生時代に鍼治療も経験されていた事が分かりました。
初診時は、Eさんの訴え症状が最も強かった右肩から肘の部まで存在していた、いわゆる腕の表側の硬い部に対し、時間をかけてゆっくりと鍼治療を行いました。肩から肘にかけてがまるで1枚の板のようにがちっと固まった筋肉は、どの部に鍼を打っても、奥深い所まで凝っているのが分かりました。「うわあ、奥で効いている感じがします」と言ったのち、続けて、「整形外科のリハビリに通っていた時は、痛くても伸ばせとか挙げろとか言われたんですけどそんなの絶対に無理でした」とEさんがおっしゃったので、私は次のように説明しました。
「例えば、縮こまったまま伸びないゴムをいくら力尽くで伸ばそうとしても無理なのと同じで、筋肉ももちろん動かす事は大切ですが、それは硬くなってしまった状態をこうして鍼やマッサージでしっかり解してから行えばよいことです。筋肉の緊張が取れれば痛みも解消しますし、痛みが取れれば自然に自ら動かそうという気になるものです。」
その言葉にうなずかれているEさんに対し、鍼治療後は頚と肩も含めて軽めのマッサージを行い、その日は終了しました。

2度目の来院時は、主に右腕の裏側に対して、そして声を弾ませてきた3度目は、右肩甲骨の周囲に存在していた硬い箇所に重点を置いた施術を行いました。
硬かった筋肉が解れているサインである、「最初は痛かったけど今はそれが痛気持ちいに変わりました」と言いながら、3回目の施術を終え改めてEさんに右腕を上げていただくと、前側/横側共に肩の高さからだいぶ上まで上がるようになっていました。このように、肩関節の動かしにくさや痛みも、股関節同様、その周囲に存在している筋肉の固さを取ることで改善するという事を再確認いたしました。

「実は、頭痛も辛いし腰も痛いし」と言うEさん。
右肩の状態がもう少し良くなったら、それらの部に対する治療を行っていこうと思っています。