関節の痛みや動かしにくさにも試す価値のある鍼とマッサージ治療今回は、数年前から月1ペースで通われている40台のNさんのお話しです。初診時からずっと頚から肩にかけての症状改善を目的に鍼治療とマッサージを続けてきましたが、今年に入ってからは上半身の不具合以上に、右股関節周囲の辛さをより強く訴えるようになりました。
「実は、若い頃から右股関節の調子はあまり良くはありませんでした。これまでは生活上、それほど気になることはなかったのですが、最近は特に夕方近くになると、右のウェストあたりからお尻そして太股の表側にかけてが詰まったような突っ張ったような感覚になり、股関節自体も歩く度にこきこきいう感じの時もあって気になるんです」。
1月の来院時にそうおっしゃったNさんに対して早速右の股関節周囲を診察すると、思っていた以上にお尻を中心にその周囲が硬くなっており、押した時の痛みも強いことが分かりました。したがってその時は上半身への施術はマッサージに止め、右に対してのみお尻と、お尻の内側にある「仙骨」という骨の周囲に対して時間をかけ、まずはじっくりと鍼治療を行いました。特に股関節に近いお尻の外側の固さが目立っていたので、ウェストに近い部から足の付け根に対しては、時間を使い鍼を打たせていただきました。表面が硬い箇所に鍼を打っていくと、奥深い所まで張っていることが鍼先の感覚でも分かったので、やはり鍼治療を選択してよかったと思いました。
その後は、腰からお尻に加えて、仰向けになっていただき、いわゆる鼠径部から太股の表側と外側の硬い箇所も含めて、ゆっくりとマッサージを行いました。股関節の付け根である鼠径部も、初めはかなり硬かったのですが、マッサージを勧めていくうちに、太股も含め徐々に固さは取れていきました。マッサージを30分ほど行うとNさんが、「だいぶ足が軽くなった気がします」とおっしゃったように、私自身も治療による効果を感じたので、その日の施術はそれで修了いたしました。
2月の来院時にNさんに前回の右股関節への治療後の様子を伺うと、「少し股関節の痛みが減り軽くなった気がしますが、今は立ち上がったり歩き出す時にやや違和感があります」とのことだったので、その時も1月の時と同じように右のお尻に重点をおきながら、股関節から太股に対する治療をしっかり行いました。3月以降も同じ治療を続けています。今月の来院時には、「治療を受ける度に少しずつ股関節の痛みやつっぱり感などの違和感が減ってきている感じです。こんなことなら、もっと前から施術してもらっていればよかったかもなんて思ってしまいました」とうれしそうなNさんがそこにいました。
もちろん、治療したからといって、足を使わないわけにはいかないので、生活の中である程度硬くなってしまうのはしかたのないことです。それでも、たとえ関節そのものが硬かったり変形していたとしても、それだけで諦めたり落ち込むことはありません。骨自体を元の良い状態に戻すことはできなくても、その周囲に存在する硬くなっているであろう筋肉を鍼治療とマッサージにより和らげることで、痛みが改善したり、関節の動きが良くなる化膿性はあるのです。痛みが改善されれば自然に「動いてみようかな」という前向きな気持ちにもなれるはずです。現にNさんの場合も、お尻の筋肉を解したことで、股関節への負担と痛みをかなり減らすことができました。このように、関節の動かしにくさや痛みでお困りの方にも、鍼やマッサージはお勧めの治療法なのです。