最近増えた「こだわり治療」
- 2023年01月31日
登院の看板メニューである「鍼治療を含めた全身90分コース」は、基本的には初めの30分で、特に辛さを感じる箇所への鍼治療を行い、その後鍼を打った部に重点を置きながら全身を1時間かけてマッサージするというのが定番です。
しかし最近、このコースの希望で訪れる方々に対する治療法に少し変化が見られるようになってきました。
半年ほど前から通われている50代のFさんもその一人です。
障害者施設で働かれているFさんが初めて来院された時の訴えは、「とにかく頚から肩にかけてがパンパンで、その事で頭がいっぱいになってしまい仕事にも集中できず困っています」という内容でした。
何年も前から痛みがあり、整形外科で「頚椎ヘルニア」と言われ、リハビリに通ったり整体に行ったこともあるようですが、「なかなか症状が取れなくて」と悩んでいました。
ベッドに座っていただき訴えのあった箇所を触察すると、肩に軽く手を置いただけで、すぐにその周囲が板状にバキバキに凝っているのが分かりました。
初めから辛い箇所に対してマッサージを行うことももちろんあります。
しかし、少し押しただけで強い痛みを感じるほどに凝り固まってしまった筋肉は、たとえ長時間マッサージを続けたとしても、痛みや固さを取り除くには限界があります。
そこで有効なのが、やはり「鍼治療」ということになるわけです。
Fさん自身、鍼治療を受けるのは初めてということでしたが、治療法とその効果に納得していただき、早速うつ伏せで頚と肩に対する鍼治療を開始しました。
頚や肩が体に占める面積はたいしたことはないと思われる方が多いかもしれませんが、私は「そうではない」と思っています。
とくにFさんのように、「具体的にどこが」という事ではなく、とにかく頚と肩に存在するあらゆる筋肉が奥深い所まで硬くなっているような場合には、鍼治療をもってしても、そう簡単に緩める事はできません。
たとえ表面の固さを取れたとしても、今度は元々その奥に存在していた筋肉の凝りに指が触れるようになるので、再びその凝りに対して鍼を打ちます。
Fさんに対してもそのような治療を繰り返しているうちに、いつしか鍼治療を開始して1時間近くが過ぎようとしていることに気づきました。
その時点から全身マッサージをするには時間が足りません。
そこでFさんに了承を得て、その日は背中を含めて鍼治療を行った部に対してのみマッサージを時間の許す限りさせていただきました。
初回の治療直後の感想を伺うと、「まだ1回の治療では効果がよく分かりません」とおっしゃったFさんでしたが、2度目の来院時には、「あの後2・3日したら少し頚が軽くなった気がしました」と話し手くれました。
「やっぱり施術を受けても少しするとまた元に戻ってしまう感じです」。
治療を開始して間もない頃はそう言っていたFさんも、施術を重ねるごとに少しずつ症状の改善を実感されているのが分かります。
「最近、メンテナンスがどういう意味を持っているのかが、受けていてよく分かります。治療を受け続けていると痛みがひどくならないし、また辛くなるのではという不安も起こりません。心身にストレスを感じることなく元気に働けるのがとてもうれしいです。頚と肩がだいぶ楽になってきたので、次回からは腰をしっかり治したいのでお願いします」とFさん。
このように、鍼を用いた90分コースであっても、「症状の度合いに応じて時間の多くを鍼治療に当て、集中的にその部の痛みを根本から取り除く」という、いわゆる1部位にこだわった新たな形での施術を行うことも増えてきました。
私自身も、そのような施術を臨んでいる方もおられるのだと感じています。
「とにかくこの辛い部分を徹底的に」という方にお勧めの治療法です。
肩や腰に限らず、足/お尻/腕/膝等、「ここ」というように気になる箇所がある方にご満足いただけるよう、「辛い箇所への施術を丁寧に」をモットーに、今後も施術を続けていきたいと思っています。