腰痛改善の目的で40代のCさんが登院を訪れたのは、今から数日ほど前のことです。
「若い頃から腰痛持ちではありました。友達にここを紹介してもらうまでは別の鍼灸院で、
いわゆる二つのポイントを結んでの電気鍼治療を受けていたんです。
しばらく調子がよかったのですが、ここのところ急に痛みが強くなってきてしまいました」
話を伺う中でCさんが、特に左を下にした横向きに寝ると、下側になった腰に石のような固さを感じて辛いこと、
趣味で行っているヨガも腰痛により思うようにポーズが取れないもどかしさを感じていることが分かりました。
早速うつ伏せになっていただき腰を診察すると、Cさんのおっしゃっていたとおり、
腰でもベルト付近から左の側腹部に向かう箇所に、広範囲に渡る固さと痛みがありました。
またCさんの背骨が、背中から腰に向かうにつれて少しずつ左に側弯していることからも、
左腰の固さが強いことがうなずけました。
まずは、うつ伏せの状態で、腰の硬い箇所に対する鍼治療から開始しました。
広範囲に渡る筋肉の固さがある場合にはもちろん電気鍼も有効なのですが、
基本的に私は「症状のある箇所を触察しながら硬い部に対して1本1本鍼を打つ」という治療を行っています。
腰の奥深い所まで硬くなっている所が多いことが鍼先の感覚でも分かったため、
初診ではありましたが、施術時間の多くを、腰への鍼治療に使いました。
「このような鍼治療法があることを初めて知りました。所々打ってもらった奥の方がじわんと響きます」
とCさん。
そこで私は、「それは鍼が接した部分の筋肉の固さが解れているサインなんです」
と説明させていただきました。鍼治療後は、腰からお尻にかけて弱めのマッサージを行いました。
「これまで通っていたのが鍼灸院だったので、実はマッサージを受けるのも今回が初めてなんです、
とても気持ち良いですね」
と言うCさんの感想に、私自身も、鍼治療で奥の固さを取った後の表面に残った凝りを取る
「マッサージ」の効果にも改めて気付かせていただきました。
施術を終えると、Cさんの腰全体を来院された時よりはある程度軟らかくすることができました。
「1度の治療では凝りを取り切れないので、何度か通っていただいてもよいですか?」
そうお伝えするとCさんは素直にうなずかれた後で、こう続けました。
「それにしても先生の施術は受けていてとても納得がいくなと感じました。
硬い箇所を押される度に自分でもそこが凝っている所だと分かりますし、
そこに鍼を打ってもらってその奥が響くと症状が取れていく気がします」
今後もお一人お一人の凝りに寄り添いながら、
その方に合った施術を心がけていきたいと気持ちを新たにした瞬間でした。