心も体も疲れきった様子で30代のBさんが久々に来院されたのは、今から2ヶ月ほど前のことです。
「横になっても頚から肩・背中にかけての緊張が取れず、全身がリラックスできない感じで辛いです。ここに来る前に他のお店でも施術を受けたのですが、マッサージだけでは改善しないことが分かり鍼治療を受けたくて来ました。」
そうおっしゃるBさんの頚や肩の周辺を触察すると、軽く触れただけでもそれぞれの部ががちがちに硬くなっているのが分かりました。早速うつ伏せになっていただき、訴えのあった箇所に対する鍼治療を開始しました。
施術を進める私に対して、Bさんは次のように話し始めました。
「実は今休職中なんです。デスクワークの仕事なのですが、これまではとにかく任された仕事を昼食時間も削るような勢いで必死にやってきました。
休みの日も仕事を家に持ち帰って行ったり、夜布団に入っても明日以降の仕事内容が頭から離れず、それが原因なのか、この頃なかなか寝付けない日が続いています。
それが先週、私の中で何かがぱちっと弾けてもう限界だという気持ちと共に、体調が悪化したので思い切って1ヶ月間休職することにしたんです。」
Bさんがどんな思いで自分のキャパシティーを超えるほどにがんばってこられたのか、そしてその事により家事や育児など私生活の面でも様々な不具合やストレスを生じた結果、このような症状を引き起こしたのではないかという気がしました。
「休職中の今ですら、自分の体調が良く無いにもかかわらずつい仕事の心配をしてしまって」
とおっしゃるBさんに対して私は、少なくとも復職する1週間前までは仕事の事は考えない、昼間一人になれる時間を使って好きな物をゆっくり食べたり飲んだりしながらのんびり過ごしてみる、市内には気軽に行ける日帰り温泉もあるのでそこに行きゆったりと湯に浸かるのも良いのではなど、いくつかリフレッシュするためのアドバイスをさせていただきました。
鍼治療後の全身マッサージを終える頃には、Bさんの頚やかた・背中は、来院された時よりも大分軟らかくなっていました。その後は2週間に1度のペースで何度か来院されたBさんは、施術を重ねるごとに少しずつ凝りの辛さが減り、眠れるようにもなり、気付けば施術中に話される声にも徐々に元気と明るさが出てきたのを感じました。
「先生お勧めの温泉に行ってみました。それからふと思い付いたので、自分に合った枕を買いに行きました。1度行ってみたいと思っていたお店にランチを多部にもいきました。」
家族で話をする機会も増えたようで、心身の健康を取り戻されていくBさんの姿に、私自身もうれしくなりました。
先日、半日のみの仕事から再開したというBさん。
「前よりは楽しみながら家事をしたり、子供と遊ぶ時間を大切にしたりという心の余裕も出てきたので、ある意味休職してよかったのかもしれません」。
穏やかな口調でそうおっしゃるBさんに対して、今後も「心身のリラックス」
効果を届けられるような施術を続けていきたいと強く思わせていただきました。