Rさんが初めて来院された時の訴えは次のようなものでした。
「肩凝りは中学生の頃からありました。ただ頸も、高校時代に自転車に乗って
いる最中事故にあってしまっていらい、暫く痛かったんです。その頃から頭痛も
かなり気になり始めました。最初は後頭部の表面近くだけだった凝りが時間と共
に頭の奥の方まで広がって頭の中がつまっているような痺れたような感じになっ
てしまったので、とにかく今はそれをどうにか改善したいです」。
マッサージの経験はあるとお聞きしたものの、まだ10代のRさんにはとやや躊
躇いましたが、やはり頭痛の改善には鍼治療が最適なので、Rさんの了承を得て
から鍼を打つことにしました。
俯せになっていただき頸から後頭部にかけてを診察すると、軽く触っただけでもそこが広範囲にわたってがちっと固くなっているのが分かりました。
さらに固い箇所を頭の奥に向かって押した時の痛みが強いことも分かり、指が届かない部分の筋肉が凝っているのも明らかでした。
凝っている箇所に鍼先が当たると、やはり鍼特有の「響き」を訴えていました。
凝りの度合いが強いとそのようになりやすいことをお伝えし、それでも無理して受けるのは苦痛かもしれないと思いましたが、「だいじょうぶです、多少響きが強くてもその後楽になるのであれば受けますので続けてください」と言うRさんの反応で、いかに症状が辛くそしてそれを何とかしたいという強い思いが伝わってきました。
したがってその後は頸を中心にその周囲の筋肉の緊張を取ることに集中しながら治療を進めました。そしてさらに俯せのままで、鍼を打った箇所に対してじっくりとマッサージを行いました。
この治療を3度ほど続けた結果、「だいぶ頭痛が無くなってきたし、頭全体が凝っていなかった時の通常の感覚に戻ってきています。ここまで軽く感じるのは久しぶりです」といううれしい感想をいただきました。
私が触っても、後頭部とその周囲が治療をするごとに柔らかくなっているのを感じました。
頭が軽くなると、それまで気にならなかった肩凝りや背中の張りを訴え始めた
Rさんへの治療に携わりながら、頭痛への鍼治療の効果と共に、辛い症状が改善するとそれまで意識しなかった他の部の不調に気付く。
そして、そうやって少しずつ気になる箇所のメンテナンスをしていくことで徐々に全身のバランスが取れ、元気に毎日を過ごせるようになるすばらしい治療法が、
鍼やマッサージであることを改めて実感しました。