1週間ほど前に、介護の仕事をされている60代のKさんが、肩凝りと腰殿部の痛みで来院されました。たまたまその時のKさんは「つい職場の同僚に強い口調で注意してしまって」と、仕事関係で起こしてしまった自分の対応を気にされていました。「そうだったんですね」、「なるほど」などと話をお聞きしながら、いつものように鍼治療とマッサージをさせていただきました。やがて治療を進めるうちに少しずつKさんの心の重りが取れてきたように感じた私はふと、「ところであなたのストレス解消法って何ですか?」と尋ねてみました。するとKさんは次のように話し手くれました。
「自分でもちょっと不思議に思うのですが、今回の様に人との接し方で悩んで
気持ち的にどうにかなりそうだという時には、その気持ちを和らげてくれる出来
事がどこからともなく降ってくるんです。例えば、買い物に出かけた際にえ?と
驚くような良い事が起こったり、たまたま中の良い友達から元気が出るような電
話をもらったり、思わず大笑いしてしまうようなエピソードを耳にしたり。
そんな事があった後だとふと気にしていた内容を思い出してもまあいいかという
ように心が楽になるんですよ。」
肩や腰が柔らかくなり自分の気持ちも落ち着いたのか、施術後のKさんはとて
もすがすがしそうでした。
そして、「全身が延びた感じ、それに昨日あんな事があった後の今日が治療日で
本当によかったです、私って運がいいかも」とKさん。それを聞き私は内心、
「やっぱりこの方には辛い時に良い事を引き寄せるパワーがあるのかもしれない」
と思いました。
一般的に「ストレス解消=趣味やスポーツをすること」だと思っていた私にとっ
ては、「そういう癒やされ方もあるのだ」と改めて気づかされた出来事でした。
さらに帰られる直前に言ったKさんの「これぞまさに凝りと共に去りぬです」
という一言が、私にとって印象に残り、そしてとてもうれしいフレーズになりま
した。